映画現像所

白い壁が 蛍光灯の光でやや 黄色みを帯びている 
時間は夜の2時 
時計盤の針は 止まったようにゆっくりだ 
塩化ビニール の床  
一向に仕事は減らない、減らないどころかたまる一方なきがする 
眠気を数値にしたように黄色いプラスチックが積まれていく。
眠いのは 当然でそこを どうぬけていくかが 課題だ 
室内 夜なので景色は変わらない 
 現像所は 流れ作業だ。ゴールデンウィーク、夏休み、お正月、春休み、長い休みのとき、封切りの映画が多いので 
ゴールデンウィーク前、夏休み前などになると急に 製作所からフィルムが届き、普段は日中しか稼働しない現像所もそのとき限りのアルバイトを集め、昼夜ぶっとおして 働きだす   私たち、アルバイトはフィルムの絵と
フィルムについた数字、それから音声があってるか調べて
それからチェックに合格したフィルムを巻き、だいたいタイヤくらいにまで大きくなったフィルムを 黄色しろいプラスチックにいれ、また 
映画のタイトルと だいたい一本の映画で フィルム7、8本なのだが その何本めのフィルムかを 紙にかいたのをてらしあわせ、積み上げていく 
あっときずくと
見ていなくてやり直しなんてよくある
途中わからなくなっても
みんな作業に終われ、軽々しくきけるようなかんじではない

顕微鏡のようなものでライトをあてフィルムの細かい部分をチェックしたり、暗幕の中で動画をチェックする工程などもある
そういった専門的なことは従業員の正規のひとがしていた  
 私たちバイトも従業員も同じ男も女も緑色と灰色がまじったような作業着をきている。
 まえの工程になるとフィルムをまいているような部屋もあったが 何度かものをとりにいっただけで仕事はしなかった 

フィルムチェックと 巻き上がって黄色いプラスチックにまでフィルムをいれると 台車に積む 
それは ドア一つそとで フィルムを運ぶ作業をしてると塩化ビニールの床がキュキュと鳴った 

朝方 仕事が終わると足早に皆 駅に向かった 
よく 寝過ごし 京王線を往復し いつのまにかラッシュになったりした 

映画は 映画じたいも好きだがフィルムのあの鮮やかな黒 青  そして薬品がかった匂いが いい 
人工的で

一度 あまりにきれいで 絵に貼ったがあまりうまくいかなかった 

カタカタと一定のリズムで巻かれるフィルム、ネジや緑色の機械白色光の元、そっと目をこらして覗いてみられるフィルムの世界 
薬品の匂いのする
現像所 
積まれていくフィルム
大勢の作業着をきた人々

これがパソコン時代になると ボタン一つでコピー 発送なんて作業でできてしまう 
この作業着と 本当に末端までくると大勢の裾野のある そんななかでできている映画 その裾野のほうまである映画の色気

しぐさがかっこよかったり、色っぽさは合理的とは限らない


Image by 15299 on Pixabay