彗人社とイカロス

降臨の科学

この彗ですぐに頭に浮かぶのが彗星である。
暗黒の空に輝くほうき星。
落ちてくる一瞬で,願い事すれば,その願いが叶う。
星に願いを という有名な歌もある。
星の光が地球に届く膨大な時間,
地球に光を送っているうちに,星は消滅しているかもしれない。
流れ星は,地球に落ちてくるときに,燃え尽きながら消えていく。
人もものすごい速さで燃えながら落下しているようには思えないだろうか。
「イカロスの墜落のある風景」という詩がある。
Landscape with the Fall of Icarus
ピーテル・ブリューゲル(Pieter Bruegel(Brueghel) de Oude
の良質な模写となっている。「バベルの塔」1563年で有名な作家だ。

ブリューゲルの絵
<ブリューゲルの絵>
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%82%AB%E3%83%AD%E3%82%B9%E3%81%AE%E5%A2%9C%E8%90%BD%E3%81%AE%E3%81%82%E3%82%8B%E9%A2%A8%E6%99%AF

この墜落をわたしが読んだ本では,イカロスの失墜となっていたと思う。どの本かは忘れてしまった。岡本太郎か,花田清輝の『復興期の精神』にも共通したテーマがあったから,どちらかだと思うが・・・定かではない。模写として紹介されていなかったと記憶している。

曖昧な記憶はさておき,
ここで注目したいのは「イカロスの翼」だ。
イカロスといえば,以下の歌が有名だ。

「勇気一つを友にして」
作詞:片岡 輝 作曲:越部信義
1
昔ギリシアの イカロスは
ろうで固めた 鳥の羽根
両手に持って 飛び立った
雲より高く まだ遠く
勇気一つを友にして

2
丘はぐんぐん 遠ざかり
下に広がる 青い海
両手の羽根を はばたかせ
太陽めざし 飛んでいく
勇気一つを友にして

3
赤く燃えたつ 太陽に
ろうで固めた 鳥の羽根
みるみるとけて 舞い散った
つばさうばわれ イカロスは
落ちて命を 失った

4
だけどぼくらは イカロスの
鉄の勇気を 受けついで
明日へ向かい 飛び立った
ぼくらは強く 生きていく
勇気一つを友にして

以上,「勇気一つを友にして」。

わたしは,小学生のときに歌詞を覚えて歌った。
このとき,わたしは,格好いいなとイカロスが太陽へ向かうのを想像していた。
飛翔している浮遊感があった。
おそらく,今以上に子供のときのほうが,抑圧されていたんだと思う。自由を求めていたんだと思う。現代の子供たちは,この歌を聴いて,憧れるのだろうか。

さて,イカロスで検索したら,GReeeeNにも『イカロス』という歌がある。

歌を見てみると,
GReeeeNの『イカロス』のPVでは少年少女たちが大声だして,花瓶が割れたり,絵具がこぼれたりするところです。青春のなんともいえない憤りが表現されていたところが惹かれた。理由なく大声を出したくなる。誰のせいでもないんです。親や学校や社会のせいじゃないんです。ただ,若いときには,そういうときにはあるんだというメッセージをPVと歌から読み取った。

わたしは,「イカロスの失墜」を大きなテーマで踊ったことはないが,
どこかで上から下に落ちるという振りをするときに,「イカロスの失墜」が頭に過ったことがあった。
たとえば,ジャンプするときに,上へ行くためのものではなく,
落ちるためにやる。
また,落ちるのを目的ではなく,でも,落ちてしまう。

重力の問題と物語でいえば,「イカロスの失墜」があるのです。

神話では,イカロスは,勇気ではなく,
忠告を聞かない無謀な息子として描いています。
でも,わたしは神話にも歌詞にも,どちらにも共感するところがある。
つまり,「イカロスは勇気があり,無謀であるが,イカロスはそうせざるを得ないところにあった」と考える。

Photo by Akihiko Iimura

翼がなくても,ここじゃどこへ行きたいともがくところに舞踏があるように思う。