歪んだ記憶の一部

もしかしたらその人は
夢の中なのかもしれない 
いや、夢というより
本人は10年前からアルツハイマーで寝たきりの植物人間
チューブがついて、おしっこも全て何もできないのかもしれない、つたがまきついている家には
奥さんが介護していて、たまに瞼のおくに虚ろな目がみえる
指先が少し動く
ため息と時計の音が
チクチクと時を刻む音と心臓の音を
きいてるかもしれない
何日もあらわないせんたくもの、寝たきりの
が脳の隙間でみえる
かいまみてる世界かもしれない脳のなか
歪んだ記憶の一部
思い出の中、
だとしたら惚けた自分を見てる自分がいたのだろうか?

部屋の中には堆積した何かがあった、ほこりをかぶり、その暗闇が一体となり、
きりはなしてはいけない
ほこりひとつも意志をもっていてこちらの意志の力ではどいてください
ともいえないようだ
もしかしたら現実で意志の力にまけてついには追い出されてしまったのかもしれない

 あの人は、間にいた
川の中洲のように流れの間に
こっちに棒をもった子供が座ってる
何故、この流れから出てしまうのだろう?みんな
あの人は生も死ない感覚の切っ先にいる
おぼれている
水が流れぶくぶくぼうをもって

川が金色の川がながれてくるひかりにあごうごうとみずいしる流している子供のようにあそんでしまうもっと大きな流れ命の中
ぶくぶく音のぶつかりあう音がする
魚釣りをしている子供
名前を忘れているあの人はは もう死んでいるのかなのかもしれない、現実というリアリティーのラインでだ 
しかし、いる
存在しているのだ

忘れさられた家
何かの念があったとしても思い残したこと
まあまあ
どちらにしてもだ
先を急ぐことも戻ることも誰もみていないことだし
時間くんがいたとして時間もとっくにつきあわないようだ
どっかにいってしまった
さりとて先をいそいでもなと
あうひともいないなと戯れ言をはいてみる
幽霊だとしてもだ
この存在はある
自分と同様、家も空き家にしすぎた
留守にしすぎて名前も忘れたのだ

このシーンとする
静寂がこわい
ねむり、うつろうつろ実態が不明になるのもこわいが、醒めてしまうのはなお恐ろしい

怖いというのも

アルツハイマーの
が存在を説いてはいけないのか

この存在をかるく 
いまにも登ってしまいそうで
無理やり家にくくりつけているような 
家がある 
いやいや、本当にたこの糸のようにくくりつけてないと
無意識になった瞬間
するりするりときにのぼってしまう
気がつくと赤いかさと一緒に私は高いとこにいる
一体、ナニをしようとしてたんだ
ああ
辺りを見回すがだれのせいでもないようだ
私の中に誰かいるのか?
自分の中にだれか
いる

いやいや
私だ
愛嬌をふりまいてしまう

巻き戻してみよう
こんなときはそうにかぎる
感覚をもとにもどして行けば頭ももどるに違いない
感覚をひらかない
体に戻せ
ああ、そうだ
こんな感じのおさまりだ
膝とほおがふれる
着物の感触がする
ふく風が寒いようだ
どうやら、生きてはいるらしい
急に体が楽しくなってくる

いけない
いけない
そうだ
何かはなしてないと
つれていかれる

いやいやと
戯れ言をはく

とここは劇場でないか
頭に劇場があるのか
どうなのか
そういうことなら
話しは楽だ

よしよし
のっとられない
そうそうこんな感じは知っている
何もわからないから
シーンをかえることもこの世界自体に刺激をあたえてはいけない、世界にきずかれるともとの世界にはもどれない
世界にきずかれないうちに名前をとりもどさなくては
私は何者でどこからどこへいくのだ?
さもまともですよ

彼はじしょぎみにはなすが、まともにやろうとおもえばできますよ、あえてこんなこともしてますよみたいな向こうに引っ張られることじたいが病気であるのに
まともであることを強調する
というか恥ずかしいのだ、向こうでは自分をなくすほど
気持ちのいいのに、急に現実につれてこられると、本当につれてこられたようで
しゅんとしてしまう
見せる顔がないのだ

呪わしい?
空がみえるようだ

あ、赤い傘があった

またまたのっとられ
悦に入ってしまう

ああ
風がさよさよ喋っている

ちびっこがいる
たまに実体のない通行人の人生があるいている

自嘲気味なこともしてましたよ

あの人は赤い傘をもつ私はいけてると
自分にも赤い傘にも酔いしれた

世界にみられてない私は自由だ
池袋えき わすれさられたように そのいえにある 無駄 
それが 暗黒物質なのかもしれない 
家が踊っている
暗黒物質と私はいつ分離したのか
暗黒物質が私をさけていく光だ
しかし影のように暗黒物質は私のよこにいる
人間である私がこのように二つにわれているのはなぜなのか
私のなかにあるものそれも暗黒物質なのかもしれない
いやいや不気味であるふれてはいけない
気がつけばまた木の
上にいる
台所にある暗黒物質をとったら死んでしまうかもしれない

そこの木と木のあいだをいったりきたり 
約束 
を待っているような ありがとう

遊びの神様のようにそのせかいにおりてくる 

まあそんな遊びを
楽しんでいるのですと

にわかにジャズの音が鳴り響き 
口紅や あわよくばという男女のだましあい グラスの音
やり
たばこの煙自信ですよ
みたいな風体だ

宇宙旅行を続ける宇宙せんのようにその家は青ざめて存在している 
空間も時間も同じことだ
部屋のなかで奥さんは黒い服とくろいめをより黒く より 
黒さを求め 夜と闇の色を集めている 

宇宙戦士であるように名前を落としてきてしまったあの人は
今日も立ってしまう
意味も名前も立つことにいらない 
現象があるだけだ 
そして仙人のように 家のはしの庭で 大きなのびを するのだ