よっちゃんと木になるネコ

絵本『よっちゃんと木になるネコ』

<あらすじ>

女の子とネコの物語。

女の子の名前はよっちゃん。ネコの名前はヤナ。

二人はいつも一緒に遊んでいた。

ある日、突然、ヤナが死んだ。

よっちゃんは、ヤナを庭に大事に埋めた。

すると、埋めたところから芽がでて、大きな木になった。

木には実がなり、実からニャーニャーと聴こえてきた・・・。

<お話しについて>

この物語は、少女とネコの交流の物語です。しかし、ネコはすぐに死んでしまいます。ネコの死から少女はネコとの本当の交流をするのです。我々、大人は、日々、あまりにも多くの人やモノやコトと出会っています。電車や職場、テレビや雑誌、広告、SNSのインフォメーション、凄惨なニュースもそうです。どれも深く関わっている実感をもつことはありません。それはどうしてでしょうか。
おそらく、途轍もない速さと大量の情報が、我々には、早すぎて多すぎるからではないでしょうか。
行き交いすれ違っているモノやコトは、近くにいる友人や一緒に住んでいる家族も例外ではありません。
どこかで、ふと立ち止まることはあっても、本当に大切なものまで、すぐに別のモノやコトに埋もれてしまいます。日々にとって、自分にとって、大切かどうかも確認する機会もないのではないでしょうか。

だけど、大人でも大切な人の『死』に出会うと失ったものの大きさや日々の重さにやっと気づかされます。そのときに、あの時の、『彼』ではなく、『死』のあとの『彼』と再会するのです。この物語は少女とネコですが、大人であるならば、大切な「彼」として考えられます。彼岸と此岸の間を往還するような混乱が生じることもあるでしょう。
ここで、わざわざ『大人』と『子ども』を分けて書きましたが、『子ども』のほうがもしかしたら『大人』以上に、大変な危機にさらされているのではないかとさえ思います。子どもはもっと素直にもっと無邪気で野生的であってもいいのではないでしょうか。
大人にはない『子ども』の時間を生きて欲しいと願ってやみません。

<イーダトモコの絵について>
『よっちゃんと木になるネコ』は、イーダトモコが事故で不遇な少女時代を過ごした時に出会ったネコのヤナとの物語をベースにしています。絵本に『ヤナの思い出と墨で絵を描いた切っ掛け』を付記してあります。子どもが一人で読むときは本を開き、本の世界へ入り込みやすいように絵がしっかり見られるサイズにしました。

また絵は、墨で描かれています。墨の黒の中に微細な色彩があり、『ぼかし』と『かすれ』、『余白』をご堪能くだされば幸いです。
子ども、また絵本好きな大人の方、ネコが大好きな方も『よっちゃんと木になるネコ』の世界へどうぞお越しください。